今回は佐藤はつきさんの『オレが私になるまで』(KADOKAWA)の紹介です!
身体の性の変化が描かれた作品は多くありますが、この『オレが私になるまで』は私が今まで読んできたそうしたテーマのマンガの中でも群を抜いておもしろいです。
その大きな理由は丁寧な心理描写によって主人公の内面の変化が描かれていること。
コメディに偏ったマンガ的な表現・展開は少なく、身体が男性から女性に変わてしまったらどのような悩みがあり、どのような心の変化が生まれるのかを現実的に描いているからこそ読んでいておもしろい作品だと思います。
そんな『オレが私になるまで』をおすすめしたいのはこんな人!
- 1人の人間が傷つきながらも成長していく様を見たい人
- リアリティのある物語展開を楽しみたい人
- 心理描写が細かくなされている作品を読みたい人
あらすじと紹介
あらすじ 楽しいことが大好きで、うるさい女子にはスカートめくりで反抗するようなヤンチャ小学生男子・藤宮明(アキラ)。 アキラはある朝起きると身体が女の子になっていた。 男に戻ることを願いながら日々を過ごし、周囲の環境が変化していく中でアキラは自身のこれまでの間違いに気づいていく。 そしてその苦悩や衝突の中でアキラの気持ちは徐々に変化し成長していく。 |
『オレが私になるまで』はアキラが小学二年生で女の子になってから高校生までの物語です。
先に述べたように『オレが私になるまで』を素晴らしいと思う一番の理由は細かい心理描写にあります。
男の子だったアキラはクラスメイトのスカートをめくって泣かせるなど、元気だけど決して「いい子」ではありませんでした。そのため身体が女の子になった後、アキラは女子グループと馴染めず、男子グループからはひどい悪戯をされてしまいます自分勝手だったアキラは過去の後悔とトラウマから他者へと目を向けることを学び成長していくのです。
『オレが私になるまで』は身体の性の変化をきっかけにしてアキラが他者と自分自身に向き合っていく姿が緻密に表現されているため、まるで自分自身もアキラと心を一つにして成長していくような感覚になります。
また学校での風景や雰囲気もリアリティがあり、学校という社会の良いところ、悪いところを読者の経験と重ねながら読むことができるのもおもしろさのポイントだと思います。
ぜひこの作品を読む際にはこうした表現やアキラの一人称など小さな変化にも注目して読んでみてください!
また、佐藤はつきさんは『オレが私になるまで』をTwitterでも掲載していて、今も佐藤はつきさんのアカウントから読むことができます。
おすすめしたいのは『オレが私になるまで』をまずTwitterで一度読み、それから単行本でも読むという楽しみ方。
佐藤はつきさんは作品を単行本にする際にいくつかの部分で修正を入れています。物語に新しく入った要素、抜かれた要素、細かいセリフなどの変更は読者にメッセージをより伝わりやすくするための変更なので、そこを意識することで作品を深く楽しみながら読むことができます。
1巻の感想と考察(ネタバレ要素を少し含んでいるため注意してください!)
1巻の感想と考察を語っていきたいと思います。少しネタバレ要素があるので、紹介だけで作品を楽しみたい人は注意してください!
1巻はアキラの小学二年生から小学五年生までが描かれています。
1巻で注目して読んでほしいのは男に戻りたいと願っていたアキラが女の子であることを徐々に受け入れ、悩むという変化です。
アキラは転校先で渡井瑠海という大切な友人を得ました。
彼女の優しさに触れながら過ごすことで閉ざしていた心に変化が生まれていきます。
その変化をはっきりと読み取れるのが、髪型を褒められることや可愛いと言われることで自分が嬉しがっていると自覚する場面。
この場面は特にTwitter版と単行本での違いに注目してほしいです。
Twitter版ではこの2つの嬉しさに対し「どっちになりたいんだろう」と自問しますが単行本では「どうなりたいんだろう」というセリフに変更されています。
この変更はアキラに男か女かという選択をさせるのではなく、宿泊研修で瑠海に言われた「アキラはアキラだよ」という考え方に導くための伏線になっているんじゃないかと私は思っています(あくまで個人的な感想)。
また変化を受け入れ始めるアキラと元に戻してあげたいと思う家族の心のすれ違いも1巻では重要なポイントでした。
家族からの期待や優しさがプレッシャーになってしまうというのは、誰かが悪いというものではなく難しい問題だと思います。
しかし、難しい問題だからこそ向き合うことでよりよい関係や成長が生まれていくのではと思っています。
2巻以降のアキラの向き合い方、そしてどのような答えを出していくのかにも注目して読んでみてください!
まとめ
以上、『オレが私になるまで』の紹介でした。
魅力が多すぎて短い文章ではなかなかそのすべてを語れませんが、人間がどのように変化し成長していくのかを考えながら読むことのできる作品です。
今回僕が語り切れなかった部分は、ぜひ実際に作品を読んで確認してみてください!